ライフストレス研究所だより

長年の経験を活かしてライフストレスケアという次世代の人間学を紹介しています。

自立と共感のバランス

「自立」と「共感」のバランス

心優しい人が幸せになれていない実態がある。

家族や友人が苦しんでいて自分には助けてあげられないときに、自分が喜びを感じること、幸せになることに罪悪感をもってしまう。

自立心の強い人は、このような方に対して、「自分を大切にするように」「あなたまで苦しむことは誰も望んでいない」と励ますことがあるだろう。

しかし、この心優しい人がその忠告を受け入れて幸せになっていくことは簡単なことではない。

幼児期に家族内で無自覚に起きたことだと思うが、この人は家族が対立したり、苦しんだりしたときに、自分が毒を弱めていく「中和剤」のような働きをしてきたのだ。

だから、身近な人が苦しむときに、自分が幸せになることが難しい。

長所としてとらえれば、この人は「共感」の力が伸びたかもしれないが、一方で「自立」の力がうまく育たなかったようだ。

実際の面談でも、自分の悩みと他者の悩みを混同する人がいる。まずは、それを区別することから始めている。

それは「悩み」はいくら他者が力を貸しても本質的には解決しないからだ。

誰しも、人生の中で向き合って乗り越えないといけない苦しみが用意されていて、それは他者が代わりに背負うことはできないように思う。

人間をどのような存在であると信じるのか。運命に翻弄され、苦しみの中でもだえ、ただ不幸になることしかできない存在なのか。

どのような状況でも主体性を発揮して意味ある人生を創造しようとする存在なのか。

そして、その課題は、それぞれ自分の人生に用意されている。

他者の背負うべき課題は他者が乗り越えるために現れているのだし、自分が乗り越えないといけない課題も必ず用意されている。

本当の共感とは、このように人生に主体的に向き合っている者同士が励まし合い、支えあうものだと思う。

このテーマは今後も書いていきたいと思っている。