ライフストレス研究所だより

長年の経験を活かしてライフストレスケアという次世代の人間学を紹介しています。

心の柔軟性と面談

心の柔軟性

メンタルヘルスコンサルタントとして企業団体の職員との面談をする機会も増えてきた。

同じ面談でもカウンセリングやコーチングとの違いがあると感じている。

以前はストレスケア・カウンセリング、健康カウンセリングも行っていたが、それも通常のカウンセリングとは異なる。

しかし、これらの理論や技法には共通点が多く、面談を観察する人がいたとすると、専門家でないかぎり、同じようなものに見えるだろう。

その意味では、様々な面談技法はビジネスでの営業的な使い方、教育や子育て、パートナーとの関係性、日常の人間関係などに応用可能であるともいえるが、その目指すところは異なるはずだ。

何を言いたいかというと、技法の独自性よりも面談が目指す「目的」によって、その内容は別物になるということだ。

一般的にカウンセリングは、環境への適応性、個人の発達、主体性の向上、ライフスキルの習得をめざし、コーチングは目標の設定と達成を支援する。

ではライフストレス研究をベースにしたメンタルヘルスコンサルティングは何を目指すのか。

それは上記の要素を含みつつ、ライフ(生命・生活・人生)の創造にむけて支援する活動である。

もちろん、発達、適応、目標達成にしても個人的視点から共同体意識、集団性への視点拡大が必須になるが、どうしても「個人心理的人間観の産物」であるという限界がある。

以前の記事で書いてきたように、ライフという概念には、様々な人間観でとらえた自分が含まれており、個人と集団の関係を断裂しない見方を有している。

企業団体でのメンタルヘルスコンサルティングでは、メンタル不調の問題をだれもが抱えているわけでもなく、心理的な葛藤や不満を抱えているものでもない。

あるいは、目標設定やその達成にむけての支援を求めている人ばかりでもない。

私の面談を終えて、本当に楽しかったと言ってくださる方が多いが、それはわざわざ問題を掘り起こしてそれを解決してもらうというようなアプローチをとらないからだ。

その方のライフ創造の軌跡、今、最前線でどのようなライフが積み重なっているのか、それを具体的に対話していく。

そのなかで、以前は必要だったかもしれないが、今は不必要になった考え方、解釈、視点の固定を外す時期にあるのならその解除の手伝いをする。

あるいは、今のライフ創造の方向性を明確にするような新しい見方、視点、考え方を言語化したり、行動化する支援を行う。

カウンセリングなどに慣れている人は、私がなぜそのような話題をしているのか、その話題がどこに進んでいくのか、予想できないだろう。

しかし、明らかに面談が終わったときに、その方のライフがブラッシュアップされていて、すっきりとしたお顔で、前に向かっていこうとされていると思う。

これは私の力量があるからではなくて、技法がすばらしいからではなくて、ただ、面談の目的をライフ創造においているだけで生じる効果だと思っている。

このような難しい話を簡単に言葉にすると、クライアントが自分なりのライフを生み出していく力を引き出すために、「心の柔軟性」

を高めていると言ってもよい。

仮説の積み重ねで問題の設定とその解決という枠組みを与えられた相談者は柔軟にはならない。その枠組みに固定されている。

特定のテーマに基づくカウンセリングなどが危険なのは、確かにその問題には一定の効果があるだろうが、ライフ全体の柔軟性を損なう場合が多いように感じている。

私がオフィスでの個人面談を停止しているのは、社会全体に「カウンセリング」という言葉が広がって、心の不調に対してケアがなされている状況では、来訪者との間で上記の記事ような関係性が築けないと考えているからだ。

当面は、他のカウンセラーなどに紹介をしている状況である。

不調はあってもよく、なくてもよい。家庭で、職場で、学校で、生活を送っている人がライフ創造というテーマで来訪してもらえる環境を作り出せたときに、個人面談もまた新しい段階に進めるだろう。