ライフストレス研究所だより

長年の経験を活かしてライフストレスケアという次世代の人間学を紹介しています。

メンタルヘルスコンサルタントの役割

メンタルヘルスコンサルタントの活動で重要なのは、クライアントとのやり取りの中で、新しい「思考方法や信念の構築、行動化、他者や集団との関わり方」を生み出していくことだ。

カウンセリングやコーチングはクライアントが持っているものを引き出すことを得意とする技法であり、それも使うことにはなるが、上記のテーマを実現するには不十分である。

それは社会の仕組みや、流布している言説、一般化している思考方法のなかにも課題があるので不調の方を元に戻すだけでなく、生命・生活・人生の創造にむけて獲得していく新しい知恵があると考えているからだ。

従来は、それを「教育」のなかで扱っていたが、心理教育、健康教育、ストレスコーピングの教育などをカリキュラムに基づいて集団的に行うとしても知識・技術の習得までで終わってしまう。

知識を取り入れても、人間は自分の思考・行動パターン(性格)や信念を変えることはなく、学んだ内容は部分的に取り込まれたとしても活用されることは少ない。

それは慣れ親しんだ性格や信念に基づいて行動選択をしていけば、慣れ親しんだトラブルが起きるが、それへの対処も慣れている。

それに対して、新しい行動パターンや信念をとれば、従来のトラブルがなくなると頭では分かっていても、その反面、どのような影響があるのか、それは未知数であり、その対処にも慣れていない。

このような事情で、周囲からいくら言われても、いくら学習しても、人間は信念、思考・行動パターンを変えようとしない。

メンタルヘルスコンサルタントは、このような前提に基づいて、クライアントとの共同作業で、今、取り組める具体的な選択肢をみつけて実践していくように励まさねばならない。

具体的な体験を繰りかえすことが思考・行動パターンを変えることになり、それでよい結果を得ることができれば信念も変わっていく。

そして、そのような取り組みの「モデル」となることもメンタルヘルスコンサルタントには求められている。知識だけを伝える者では役に立たないのである。自らが上記の実践をしていてはじめて役に立てる。

共同作業と書いたのは、クライアントを縛っている思考や信念は現代を生きるコンサルタントにもあるはずで、対話の中でそこから離れていく努力をお互いにしていくということだ。育てあいが大切になってくる。

このようなテーマを個別面談、グループ面談、そして集団研修で実現していくには様々な工夫が必要になるだろう。

当面、遅れている「集団研修」の場で、知識を伝えるのではなくて、参加者が自分の課題に気づき、新しいものを取り入れていくことができるように努力をしていきたい。