ライフストレス研究所だより

長年の経験を活かしてライフストレスケアという次世代の人間学を紹介しています。

主体性の回復過程

いろいろと言葉で考え方を整理していくと書いたことがすべてになって、書かなかったことが見えなくなる。困ったことだ。

今の私の立ち位置は、生きること、ライフが刻々の出来事だということ。

そして主体的に何かを選択し続けていくことで出来事を生成している。

ゆえに、ストレスであれ、メンタル不調であれ、この選択のなかに発生の仕組みがあり、対策もあると考えている。

さらには、よりより人生というものがあるとしたら、この選択の中に答えがあると考えている。

科学、心理学、カウンセリング、ストレスケア、哲学などの枠組みを離れて思考しているのは、これらの理論や技法もまた特定の「選択」を前提としているからだ。

この前の記事で、主観の増大というふうな表現をしたが、正確には「主体性の増大」だろう。

選択枠の増大だと言ってもよい。

�@脳科学的人間観では、人間の自由意志や主体性は極度に小さく、出来事を生み出す行為は物質世界と情報のやりとりをしている脳機能の表現として説明される。

�A個人心理的人間観では、個人の身体と物質世界があって、個人の行為選択の背後に主体的に動かせる「心」があるとする。このように個人の身体と並行して働いている心まで主体性を広げている。

�B個別世界的人間観では、各人は自分なりの世界を観ていて出来事はそこで起きている。

他者と向き合っていても、それぞれが異なった世界に住んでいる。他者の言動に違和感を感じるのは、異なって見える世界を前提とした言動だからだ。

自分で知っていることで構成した世界なので、不可知の世界は不都合として現れる。

�C主体的人間観では、各人は出来事を主体性をもって生み出している。対象となるものをどのようにみるかも自分で決めているし、他者がどのように考えているかも自分が決めている。

この�@⇒�A⇒�B⇒�Cのプロセスは、主体性の増大であるが、もともと人間は主体性をもって世界を創造しているのだが、その主体性を制限して、共有できる固定化された客観的物質世界を生み出している。

その意味では、このプロセスは主体性の回復といってもよい。選択対象の拡大・回復である。

たとえになるが、水が、固体⇒液体⇒気体というふうに変化するが、この人間観の主体性が�@から�Cまで回復過程をとるということは、扱い方も変わるし、それぞれ目的が異なると言ってもよい。

複雑で有機的な社会に適応するために、個人心理的人間観は生まれたと考えている。固定化、レッテル、直線的時間。

他者との共感をもたらすには、個別世界的人間観によって相互理解を深めていけばよい。

ライフの創造という視点では、上記の二つを含みつつも、さらに「主体的人間観」によって、すべてを自分が選択していると考えて刻々の選択に臨めばよい。他者の心や世界観をどうとらえるかも自分で決めている。

今日、発展をとげている脳科学的人間観は、そのほかの人間観が目には見えない世界を扱っていることから、それに脳という物質の変化として基礎を与えてくれるかもしれない。

人間を能力や機能としてとらえたときに、その活用法を見出す手段にもなるだろう。