ライフストレス研究所だより

長年の経験を活かしてライフストレスケアという次世代の人間学を紹介しています。

面談技術の向上

メンタルヘルスコンサルタントの面談技術の向上について

カウンセリングやコーチングの要素を含みながらもライフストレス研究を踏まえた、新しいメンタルヘルスの面談法について整理しているところだ。

�@ 目の前の「出来事」を受け止める際に、無自覚に「人間観・世界観」が選択されており、それによって「出来事」が異なった姿を見せている。

�A クライアントがどのような人間観・世界観で出来事を受け止めているかを「出来事」の一部としてコンサルタントは扱うこと。

�B そこで考えらえている問題把握や解決策について聞き取っていき、それがなぜ行動化できないのか、よい結果が予測できないのかを明確にしていく。ここで仮の「答え」が見つかり、それに執着していることが明らかになる。

�C 異なった人間観・世界観で出来事を見直す手伝いをすることで、新しい受け止め方、処理の仕方、今後の見通しを手に入れる。

�D もう一度、目の前の出来事がどのようなものかを問い、それをどのように受け止めて次の行動を選択するかを明確にしてもらう。そのうえで行動化にむけての勇気づけをする。

従来は、問題となる「認知」や「行動」を修正しようとしたり、さらにはその背後にある「信念」を動かそうとするのがカウンセリング的な見方であった。

また、現状認識と目標設定を明確にして、その差が何なのか、具体的にどのようにして、いつまでに埋めていくのか、そのためには何が必要かなど、クライアントの中の答えを引き出しているコーチングは人間観・世界観は所与のものとして展開される。

ある意味、現代社会ではカウンセリング的・コーチング的処理については個人でも集団でも日常的に行われていることで、それで解決できない問題が本当の課題ではないだろうか。

メンタルヘルスコンサルティングの現場では、逆に、認知や行動の修正、目標設定と動機付け、具体的行動化の考えに固定されたことで、心のバランスを崩している人が多いように考える。

自分が〇〇と思えればうまくいくのでしょうけど、〇〇にむけて行動していけばいいのでしょうが、何をどのようにしたらいいかまずはそれを見つけているのです、私はどうやったら〇〇になれますか・・ここに釘付けになって動けない・・・

ライフとは目の前の出来事を引き受けて次の行動を選択していく連続のなかで生成されている。

その「一刻」の呼吸を見失い、観念の世界に閉じ込められた人に対して、カウンセリングやコーチングは無力である。

だから、観念の世界の「解体」ができる力量が、メンタルヘルスコンサルタントには求められている。

たしかに、心理療法の世界でもACT(アクセプタント・コミットメント・セラピー)のように、不満・不安・葛藤などを解消して内面の調和を目指すのではなくて、悩みをかかえながら、ライフ創造、人生の意味あることにむけて、目の前の出来事を受け入れて具体的な行動化を進めていくというアプローチも出てきている。

しかし、これは、個人心理的世界観・「人格」「自我」を前提にした理論であるので、悩みや不安を抱えながら(つまり解決することはせずに・・)人生に向き合うということに自我の痛みを感じるのも当然である。

個別世界的人間観・主体的人間観への切り替えを支援しながらでないと、このアプローチは心理的抵抗の強いものになると考えている。