ライフストレス研究所だより

長年の経験を活かしてライフストレスケアという次世代の人間学を紹介しています。

2019-01-01から1年間の記事一覧

不登校・ひきこもりと集団的自己

集団的自己と個性的自己の関係としてメンタルヘルスの問題を説明してきているが、すべてを「集団的自己」として説明するほうが実体に迫れると考えるようになった。 近代的自我の精神は、個の独立をもたらし、市場経済を成立させて、人権の確立、個性の尊重、…

集団的自己から考える

個性的自己と集団的自己の対立としてメンタルヘルスの課題を記述してきた。 たとえば、不登校、いじめ、出社拒否、ひきこもり、発達にまつわるトラブルといった出来事についても、個人のパーソナリティの問題ではなくて、個性的自己としての「信念・思考行動…

言葉による教育と感情問題

家庭としての集団的信念を持ちにくい現代において、親が理念的な言葉による教育で子どもの信念を形成しようとすることに問題があると書いた。 家庭で親が子どもと共同作業でつくっていく生き方を支えるための信念・思考行動パターンは、教師のように知的に「…

集団的自己と個性的自己

信念・思考行動パターンの流動性は「集団的自己」として、固着性は「個性的自己」として扱えると書いてきた。 そして「個性的自己」は「信念・思考行動パターン」を自分だと考えて保存して、それを変えようとする他者や集団の圧力に抵抗するものだと書いた。…

信念・思考行動パターンの固着性と流動性

念・思考行動パターンの固着性・流動性の問題について書いてきた。 これは「集団的自己」と「個性化した自己」との関係でもある。 流動性の極致は「集団」のなかで、信念や思考・行動が一方に誘導されていく問題である。 戦争に突き進んでいったとき、なぜ止…

愛情不足論を超えて

信念・思考行動パターンの柔軟性を取り戻すために、種々のトラブルが起きていると書いた。 集団に即応した信念等を身につけていくには、自分とは「信念・思考行動パターン」であるという自己保存的執着から離れないと難しい。 仮にこの固着性が子ども時代に…

集団性の根差さない言葉の教育

生き辛さの問題や環境不適応にまつわるトラブルは、信念・思考行動パターンの固定性(柔軟性の不足)にあると書いた。 しかし逆に、信念・思考行動パターンの一貫性のなさ(固定性の不足)もまた人生上、信頼を得て、価値あるものを創造しようとすることを阻…

家庭教育と柔軟性

パーソナリティー論・発達理論は、心理学者の努力で社会の中に浸透した。 功績としては、個の自覚を強めることになり、今日の社会の多様性を認める方向につながっているのだろう。 そして、個の自覚は経済合理的判断と相まって、労働・消費を通じて「市場経…

人間という連なり

「自然ー身体ー感情ー思考ー信念ー集団ー社会」という連なりが「人間」存在である。 両端をみてもらうと、外に開けていることに気づく。 この連なりの特定の「部分」(たとえば、身体ー感情ー思考ー信念」を自分だとしたら、その残りが「自分以外」になるが…

人間の欲求の集団的視点

このところ書いてきたことだが、やはり強調しておきたい。 個人の身体があって並行して、個人の心があるという前提がメンタルヘルスについて考察する場合には集団的視点を阻害するという意味で邪魔になっている。 人間の内発的な動機として、感性動機、新奇…

メンタルヘルスコンサルタントの役割

メンタルヘルスコンサルタントの活動で重要なのは、クライアントとのやり取りの中で、新しい「思考方法や信念の構築、行動化、他者や集団との関わり方」を生み出していくことだ。 カウンセリングやコーチングはクライアントが持っているものを引き出すことを…

子育てと社員教育の偏り

現代人の問題意識は「個人が集団から圧迫されている」ということだが、だとすると「圧迫に負けない自分」をつくることが対策になる。 しかし実は「個人が調和的な集団を形成する力を失っている」のが問題だとすると、「集団を形成する力、他者と調和する力」…

自分と相手を分けない

出来事を前にして、それを受け止めて、次の行動を選択していく場合に、それが自分から出たものか、対象から誘われたものかを気にする人もいる。 それは「自分」と「対象」を分けて考えたので、そのような問いが生まれてしまう。 本当に自分で考えて自分で決…

家族内の人間関係の苦悩

認知症の親とかかわっていくご苦労や、聞き分けのない乳幼児を育てていく親の苦労などご本人でないと分からないところがあるだろう。 いくら言っても一緒だからとか、受けとめていくしかないとか、相手に合わせるしかないとかアドバイスを受けても、どうして…

メンタルヘルスコンサルティングのツール

メンタルヘルスコンサルティングを進めていくための「道具立て」がそろってきました。 �@人間観・世界観の整理 �A社会で言説として構成されている「信念」体系 �B「思考」の特徴と限界・・・正しさの限界 �C「感情」の特徴と限界・・・ 集団性との関係 �D「…

相互関係としての援助

クライアントが自分のおかれている状況やそれに対する感情や考えをうまく言語化できない場合を考えてみよう。 幼い子どもだけでなく、成人であってもそのような事は起きる。 それを無理に言語化しようとするのは、コンサルタントが自分のもっている技法や、…

ライフ創造の柔軟性とストレス解消

メンタルヘルスコンサルティングと心の柔軟性についての記事を書いた。 ライフ創造について、以前は必要であった見方、視点、考え方が、今は不必要になっている場合に、それを解除していく。 今のライフ創造において無自覚に始まっている見方、視点、考え方…

心の柔軟性と面談

心の柔軟性 メンタルヘルスコンサルタントとして企業団体の職員との面談をする機会も増えてきた。 同じ面談でもカウンセリングやコーチングとの違いがあると感じている。 以前はストレスケア・カウンセリング、健康カウンセリングも行っていたが、それも通常…

不信感と個人的・集団的自我作用

生きた集団の特徴を既にまとめて記事にしてみたが、そうでない集団がなぜ生まれるのか。 �@ 集団を特定の個人が私物化する。 �A 集団にふさわしくないもの、やっていけないものを変えていこうとしてうまくいかないと排除する。 �B 特定の目的のために集団を…

視点の切り替え

人間の行動を説明するときに、ホメオスタシスや内発的動機に基づくものは「個人的視点」が説明しやすい。 「外発的動機」とされている「親和動機」「承認動機」「達成動機」はそもそも社会的なものであって、それを個人的視点だけで説明しているところに無理…

現代社会とライフストレス研究

ライフストレス研究の基礎 �@ 目の前の出来事を実在だと扱う。 �A その実在をどのような見方(人間観・世界観)で解釈するかを「選択」することができる。 �B 出来事そのものの全体を語ることはできない。様々な見方で説明するしかない。 �C その時代や社会…

人の目を気にすること

「人からどう思われるかを気にしすぎる」といって悩んでいる人が多い。 そういう人に対して「自分がどうしたいか大事だ」から人からどう思われてもよいと思って行動に移すようにとアドバイスする人がいる。 それができないから苦労しているのに。 そのアドバ…

問題解決とゴールの設定

メンタルヘルスコンサルタントの視点 支援で大切なのは問題発生の構図をどのようにとらえるかということと、問題解決のゴールをどこに設定するかである。 実はメンタルヘルスの問題は、人間観・世界観の制約によって、どのような状態になることを目指してい…

個人的視点と集団的視点

メンタルヘルスコンサルタントの面談法 �A 人間観・世界観をシフトさせて出来事を見ることが大事だと既に書いた。 次に考えないといけないことは、「個人心理・自我・パーソナリティ」という見方と「集団心理・共通する信念・価値観・システム」という見方を…

面談技術の向上

メンタルヘルスコンサルタントの面談技術の向上について カウンセリングやコーチングの要素を含みながらもライフストレス研究を踏まえた、新しいメンタルヘルスの面談法について整理しているところだ。 �@ 目の前の「出来事」を受け止める際に、無自覚に「人…

社会制度の背後の精神性

人間は集団としての協力体制によって生存をはかる生きものだから、そこには制度・仕組みという形と、その背後の精神的な価値観が一体となっている。 時代の変遷により集団的生存の仕組みが変わるとともに、背後の精神性もまた変わっていく。 資本主義の勃興…

社会で共有する価値観

社会の中に人間を幸福にする価値を埋め込む取り組み 以前は「価値観」に関することを話すと、それは個人の自由であって、また科学的ではないと扱われていた。 もちろん宗教団体の場合には社会の価値観を育てるのではなくて団体に縁を結んでもらうための布教…

価値観をなくした社会

新聞で高齢者のごみ捨てについて地域でサポートすれば補助金が出るような仕組みが紹介されていた。 健康面が医療保険制度で維持されていたが、介護保険制度によって福祉サービスとして介護が外部化されてきている。 (完全に外部化できずに、機能低下した「…

【社会で共有されたライフスタイル】

個人心理的人間観で、自分の動機や欲求で行動が生まれると考えているのが現代である。 しかし見たことも思い浮かべることもできないことを求めることはできない。 成長の過程で、「欲求(動機)⇒ 行動 ⇒目標物」という学習をしていることを忘れてはいけない…

無償の愛と家族の結びつき

無償の愛と「家族」の結びつき かつて家族は生きるためのシステムであって、そこではメンバーが一致協力して自分にできることで貢献しながら生産活動に従事してきた。 そこでの愛とは自己本位にならずに家族のために貢献することであって、それで全員が生存…